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2021.09.18展示

【敬老の日】リンドウの花言葉は「怖い」のか?青い花に乗せる想い

 

リンドウ 青色の意味

怖い花言葉?「悲しんでいるあなたを愛する」

ネットで度々見かける「〇〇の花言葉は怖い?」という記事。リンドウも「怖い」花言葉を持つ花として取り上げられているのを度々見かけますね。
「怖い」などの刺激的な言葉は閲覧数を上げやすいのでとかく検索上位に出がちですが、ここでは違った観点からリンドウを解釈したいと思います。

リンドウの花言葉は、 「悲しんでいるあなたを愛する」「勝利」「正義感」 など。
このうち、「勝利」「正義感」という言葉は、リンドウが生薬として効き目があるからだとされています。

そして「怖い花言葉」と言われがちなのが、「悲しんでいるあなたを愛する」
パッと聞いた印象だと、悲しみに暮れる様子を見て愛しく思う、悲しむ様子を嬉しく思うという少々サディスティックな言葉に聞こえるかもしれません。
加えてリンドウと言えば青色と明るい花色ではないため、なおさら恐ろしい印象がつきやすそうですね。

→過去記事はこちら 【#花は自由なラブレター】あなたもつけれる(!?)花言葉

しかし、以前も花言葉の起源について取り上げましたが、花言葉はルーツこそあれ言ったもの勝ち。新しい解釈をしてもいいのです。
サントリーの青いバラ“アプローズ”の誕生によって、青いバラの花言葉「不可能」「奇跡」に 「夢かなう」 が加わったように。

リンドウの深い青色は、 「悲しみの縁にある時も寄り添う」「たとえ沈んだ気分の時でも愛している」 という、悲しみも受け入れてくれる包容力の青色。こんな意味をこめて「悲しんでいるあなたも愛する」「悲しんでいるあなたに寄り添う」としてもいいでしょう。

また良い薬にもなる点を含めて、「病める時も愛している」という意味としてとらえるのもいいかもしれませんね。

青い花の意味


(ヨハネス・フェルメール 「牛乳を注ぐ女」 1660)

さらに青色について触れると、自然界で青色は他の色に比べて希少な色
バラのように青色の色素を作る仕組みをそもそも持っていなかったり、青色を作ることが大変だったりするようです。
実際青い花の朝顔は蕾のときとしおれた後は紫色で、咲くときだけ頑張って青色を保ちます。(花だけでなく動物でも面白い例がありますが、詳しいお話はまた今度。)

そして絵画の世界でも、かつてリンドウのような美しい青色は希少な存在でした。
鉱石の ラピスラズリ から作られる鮮やかな青色の顔料は、中世ヨーロッパの画家たちの憧れの的。原料のラピスラズリが海外でしか採れなかったために“ウルトラマリン(海の向こう)”と呼ばれ、大変貴重かつ大変高価な青色だったのです。


(ハネス・フェルメール 「真珠の耳飾の少女(青いターバンの少女)」 1655)

ラピスラズリブルーが使われている作品では、フェルメールの 「真珠の耳飾りの少女」 は皆さんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。フェルメールは何度も破産しながらもこの高価な青色を好んで使ったため、ラピスラズリブルーは“フェルメールブルー”とも呼ばれています。
このフェルメールブルー、リンドウの深く吸い込まれるような色合いによく似ていませんか?

絵描きの誰もが憧れた青色、ラピスラズリの色を自然に身に付けたリンドウ。賢治さんも作中でリンドウを宝石に例えているのは、なんとも不思議な共通点です。

その宝石の雨は、草に落ちてカチンカチンと鳴りました。それは鳴るはずだったのです。
りんどうの花は刻まれた天河石(アマゾンストン)と、打ち劈かれた天河石で組み上がり、その葉はなめらかな硅孔雀(クリソコラ)でできていました。 —宮沢賢治「十力の金剛石」

リンドウの青色は悲しい色ではなく、「自然が生み出した宝石の青色」としてとらえてみてはいかがでしょうか。

あとがき


(オークションルーム展示より、菊とリンドウ)

切り花としては夏から秋の間流通するリンドウですが、その間ずっと同じ品種で回っているわけではありません。
同じ「リンドウの花」でも季節が進むにつれて早生品種から晩生品種へと品種が移り変わり、中には花色が夏の品種よりも濃かったり、葉が紅葉するものもあるのだとか。

秋には鉢物が出回り始めますし、品種の移り変わりからも季節を感じることができますね。
お盆の花とは一味違った秋の切り花や鉢物のリンドウの青い花。いつでも寄り添いたい大切な人へ、想いをこめた贈り物にいかがでしょうか。

営業企画部

<今日の単語> 固定種
親から次の世代へと同じ形質が受け継がれ、花の形や性質が固定されたものが育つ品種のこと。種を採って蒔けばまた同じ品質の花を収穫できるため、品種の固定化を目指すことが安定で効率的な栽培出荷につながる。

参考文献
*1 高橋寿一「リンドウの高付加価値を創出するための品種開発」東北農業研究別号,10,65-73,1997
*2 日影孝志「リンドウが国際的な花卉品目になる日を夢見て」育種学研究,15,36-39,2013

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