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2021.07.31展示

【展示】アジサイはなぜ色を変えるのか

7月5日より、アキバナーセリー様のアジサイを展示させていただきました。
例年暑い時期にお世話になっている山形県のバラの産地さんですが、高度なバラの生産技術を生かしたとりどりのアジサイも作られています。

“マジカルガーネット”などの品種では、色鮮やかな「フレッシュ」からニュアンスのある「アンティーク」まで、変化する4段階の色の花を展示しました。
色を変えながらも長く花を保ち続けるアジサイ。今回はそうした花色の変化について深堀りしてみます!

今回のもくじ
1 アジサイの“絵の具”はいくつ?
 — アジサイの色変化のしくみ

 — フレッシュからアンティークへ
2 花の色はなぜ移ろうか
 — 色が変わる花の例と目的

   ①ボリューム維持と差別化=ブーケ作戦
   ②受粉が済んでいることをアピール=お歯黒作戦
 — アジサイの“心変わり”はなぜ
3 まとめ
 
キーワード:アジサイ、色素、ポリネーター

この記事のまとめ動画はこちら!

アジサイの“絵の具”はいくつ?

アジサイの色変化のしくみ

アジサイは酸性土なら青色・アルカリ性に傾けば赤色というように、植えられた土地の酸性度で花の色が変わることが広く知られています。
葉のクロロフィルという緑色の絵の具(色素)、マリーゴールドの黄色カロテノイドという黄色の絵の具(色素)という風に、植物の色はそれぞれの色素の絵の具が担っていますが、色の変化が豊かなアジサイはいくつの“絵の具”を持っているのでしょう?

酸性度で色を変えるのは、アントシアニン系の色素である デルフィニジン 。この一つの絵の具が、条件によって青~赤へと色を変えるのです。
この不思議な絵の具の色を決める条件は、大きく

①酸性度
②アルミニウムイオン量
③3種類の助色素の構成比

の3つ。
そもそもなぜ酸性土壌で色が青くなるのか?というのは、土の中のアルミニウムイオンが関係しています。
酸性土壌では土の中の微量要素であるアルミニウムがイオンになり、水に溶けて植物に吸収されやすくなります。このアルミニウムイオンが絵の具(デルフィニジン)とくっつくと青色になるのです。

反対に中性やアルカリ性に近い土壌だとアルミニウムが水に溶けださず、吸収もされないため青色になりにくくなります。

さらにアジサイには3種類の助色素があり、これもデルフィニジンとくっついて色を決める要素です。
土の酸性度、アルミニウムイオンの量、助色素の構成比。
これら3つの要素が組み合わさって、デルフィニジンという一つの絵の具が青から紫、赤へと色を変えるのです。

フレッシュからアンティークへ


(アキバナーセリー “マジカルガーネット”の色変化)

アキバナーセリー様のアジサイのように、花が緑を帯びてくることもありますよね。
これは開花から時間が経つにつれてデルフィニジンが減少し、葉緑体の数が増加することによるものと思われます。花びらのように見える、がく片の本来の色に戻っているのでしょうか。

またさらに、落ち着いたアンティークの色合いが人気な“秋色アジサイ”の発色には、デルフィニジンとは別のアントシアニン(シアニジン配糖体)が関わっています。

この色素は夏色とは異なる発色の条件を持っているという研究もあり、一筋縄ではいかない絵の具のようです。
実際、家庭でアジサイを秋までもたせて秋色アジサイを作ろう!と思ってもなかなか難しいですよね。やはり生産者さんの経験則がものをいうのでしょう。

というわけで、アジサイの“絵の具”は

①夏色を出すデルフィニジン
②アンティークな緑を出すクロロフィル
③秋色を出すシアニジン

の3つといったところでしょうか。
もちろん品種や環境によってどの絵の具をメインで使うか・どんな風に使うかも違いますし、一部の緑花品種ではアジサイに住みついた微生物によって緑化しているのでは?という研究もあります。

アジサイの色の変化はしばしばリトマス試験紙に例えられますが、それよりももっと複雑な表現力をもっているのかもしれません。

 

 

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