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2021.08.25展示

【展示:昭和村のかすみ草】自然がくれるデザインのヒント

答えは、「ヨーグルトのふた」

従来のヨーグルト容器だと、ふたの裏側にヨーグルトがついてしまいますよね。
このふたにハスの葉のような細かい凸凹をつければ、水と同様にヨーグルトが弾かれてふたの裏側につかないというわけなのです。

また時代は遡りますが、こちらのオオオニバスから生まれたアイデアも有名です。


(オオオニバスは「ハス」とつきますがハスの仲間ではなく、スイレン科の植物です。ポケモンのハスボーにそっくり。)

大きな葉は太く丈夫な網目状の骨格で支えられており、人間のこどもが一人上に乗っても沈まないほどの頑丈さと浮力を誇ります。葉脈が網目状になっていることで、葉にかかる力を分散させているのです。

時代は19世紀のヴィクトリア朝イギリス。造園家であり建築家であったジョセフ・パクストンは、第1回ロンドン万国博覧会の目玉となる「クリスタル・パレス(水晶宮)」の設計をしました。
今でこそ全面ガラス張りの温室は珍しくありませんが、当時では前代未聞の建築です。耐久力が大きな課題であり、ガラスで建物を作るなんて!雪や嵐、歩く振動に耐えられるの?大丈夫?と人々の心配の的になっていました。

(クリスタル・パレスは現存しませんが、名古屋には東洋の水晶宮こと東山動植物園のガラス温室があります。世が落ち着いたら見に行きたいものです)

そこでパクストンが温室に取り入れたのが、 オオオニバスの丈夫な葉の骨格構造 。もともと造園家だったパクストンならではの発想のおかげでクリスタル・パレスは壊れることなく、万博は大成功をおさめたのです。

このように植物や動物の機能・身体のつくりなど、自然からアイデアをもらって模倣する技術開発のことをバイオミミクリーといいます。
自然界にあるデザインや仕組みは長い年月をかけ、いくつもの世代を経て最適化されてきたもの。「人間一人では思いつかないようなすごいアイデアが隠されているかもしれない」と思うと、身近な動植物もじっくり観察したくなりませんか?

あとがき

画期的な商品開発や目立つ建築でなくても、私がかすみ草をまねてアクセサリー作りをしたように、身近なところで生かせるアイデアがきっとあるはず。自然の中でも特に花からは美しさやデザインのアイデアがたくさん見つかりそうですね。

かすみ草なら年中手に入りやすいお花ですし、生きたお花は染めの色の出具合にも自然の力が働きます。
普段は名脇役ですが、改めてじっくり観察してみると思わぬヒントをくれるかもしれませんよ。

営業企画部

<今日の単語> バイオミミクリー biomimicry 邦訳は生物模倣
生物を意味する「bio」と
模倣を意味する「mimicry」を組み合わせた言葉。自然界にある形やシステム、生態系から学んだことを技術開発に活かすこと。

参考文献
*1  英国王立園芸協会監修、クリストファー・ブリッケル、A-Z園芸植物百科事典、誠文堂新光社、2003/6/1 
*2  シュッコンカスミソウ、ルーラル電子図書館農業技術事典NAROPEDIA、農研機構、2021/8/28、http://lib.ruralnet.or.jp/nrpd/#box_search=%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%9F%E3%82%BD%E3%82%A6&kensuu=100&sort=0&logic=1&page=0&bunya=&koumoku=12404&db=&uid=0
*3  牧野日本植物図鑑インターネット版、高知県立牧野植物園、2021/8/25、https://www.makino.or.jp/fixed/?page_key=dr_makino-book
*4  品種登録データ検索、農林水産省品種登録ホームページ、農林水産省輸出・国際局知的財産課、2021/8/27、http://www.hinshu2.maff.go.jp/vips/cmm/apCMM110.aspx?MOSS=1

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