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花の研究室

2022.05.11花の研究室

『お供え物はなんの葉っぱ?』

お墓参りやお仏壇で花だけでなく葉っぱがお供えされているところを見たことがあるかとおもいます。
実はこの葉っぱ、地域によって使われている種類が違うんです。
いったい何の葉っぱをお供えしているかご存知ですか?

 

葉っぱの種類

お仏壇や神棚に供えられている葉物は大きく三種類あります。

 サカキ(学名:Cleyera japonica)とはモッコク科(ツバキ科)注1サカキ属の植物であり、漢字でと表記します。
つやつやとして厚みのある鋸歯(葉っぱのギザギザ)がない大きめの葉が特徴です。昔から尖った枝先には神が寄付くとされていて、神と人との境であることから「境木(さかき)」の意、というのがサカキの語源となっています。

 ヒサカキ(学名:Eurya japonica)はモッコク科(ツバキ科)注1ヒカサキ属の植物です。サカキと同様に葉につやと厚みがありますが、丸みを帯びた鋸歯があるのが特徴です。
サカキではないことから非榊、サカキより少し小さいことから姫榊などと呼ばれていたのが訛ってヒサカキと呼ばれるようになったという説があります。

 シキミ(学名:Illicium anisatum)はマツブサ科シキミ属の植物であり、漢字表記ではとなります。
鋸歯のないつやつやとした葉や樹皮には精油が含まれており、抹香(粉末状の香)や線香の原料として利用されています。
また、この独特の香りや有毒であることから邪気を払う力があると考えられています。

 

どんな用途なの?

これらの枝ものはどんな用途で使い分けられているのでしょうか。

 サカキは上記にもあるように、尖った枝先は神がよりつく対象物として考えられていることから神事(神に関するまつりごと)に用いられてきました。神棚や祭壇に供えられるのはもちろん、神社の庭木としても好まれ、紙垂をつけたサカキの枝葉が祈祷の際に捧げる玉串として用いられます。中京以西では神棚にサカキを供えるのが一般的です。

 ヒサカキはサカキの手に入らない北陸や関東以北でサカキの代用品として神事に用いられます。またヒサカキ単体だけでなく、仏花とセットにしてお供えされることもあります。
ヒサカキは各地で呼び方が異なり、中京ではチラ、関西では下草ビシャコ、中国・四国ではササキ、九州ではシバと呼ばれています。

 シキミは独特の香りや有毒であることが邪気を払うと考えられていることから仏事(仏に関すること)で用いられます。お寺や墓地に植えられる他、仏壇のお供えとしても使われています。関西地方では、葬儀の際に葬儀会場や自宅の入り口に飾られる習慣があるそうですが、最近では板樒や紙樒のような印刷されたものを使うことがあります。

 

見た目は似ていても用途や意味合いが全く違うなんておもしろいですよね。
お供えされている葉っぱが何なのか、じっくり観察してみてはいかがでしょうか。

 

著.もくめ

 

注1.新エングラー体系やクロンキスト体系ではツバキ科とされていたが、APGではモッコク科に分類されるようになった。

【参考文献・サイト】
正木覚,ナチュラルガーデン樹木図鑑,講談社,2012.4.26,61頁,ISBN 978-4-06-217528-9
( https://tomo.life/blogs/shinto-and-shrines/what-is-sakaki )2022.5.7
( https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-900 )2022.5.7
( https://kotobank.jp/word/%E3%82%B7%E3%82%AD%E3%83%9F-839497 )2022.5.7
( https://kurashi-no.jp/I0014954 ) 2022.5.7
( http://www.destin.co.jp/service/knowledge.html )2022.5.9