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産地訪問

2022.05.04産地訪問

【#産地訪問+@】背筋の伸びたクレマチス

長野県下伊那郡、ファーム池田様を訪問しました!今回は私=つみきに加えて、今年度の新入社員一人も一緒です。少しづつこのブログにも登場してきますので、共々よろしくお願いいたします。

もくめ
もくめ
稚拙ながら精いっぱいがんばります!よろしくおねがいします!(ペンネーム:もくめ)

【#産地訪問+@】ファーム池田様:クレマチス編

池田さんはダリアやブルースターなどの切花を生産されてきましたが、長年試験的に栽培していたクレマチスに手ごたえを感じ、メインの花へとシフトさせました。中でもダリアに負けないボリュームのある八重咲き品種に注目し、開発を進めていらっしゃいます。

ボリュームのある花にまっすぐな茎

ファーム池田のクレマチスの特徴は「端を持っても曲がらない、ピンとした茎」。茎がまっすぐだと他の切花と同じように扱いやすく、ブーケやアレンジにも入れやすくなります。
クレマチスはもともと園芸用として愛好されてきた花で、フェンスや木に絡ませて育てます。切り花として栽培する時も、園芸用と同様に茎を横に広げる形で平面的に仕立てるのが主流です。

一方、池田さんのクレマチスの仕立て方は独特。スタンダードのバラなどと同じように、茎を地面に対して垂直に伸ばしていくのです。数十センチごとに地面に対して水平になるようネットを張り、茎が伸びれば専用のピンチで留めます。伸びたつるを留めて管理するという点では、先日見学したスイートピーの育て方と似ていますね。
(→過去記事:【#産地訪問+@】春の香りがくるところ:スイートピーとストック編

またクレマチスは庭に地植えされることが多いですが、このハウスではもともとブルースターを栽培されていたため、ハウスの設備を活かした養液栽培をされていました。地面を耕すためのトラクターを使わない分、こうした設備にコストをかけられるのだとか。
株は一つ一つピートモスでポットに植え付け、滴下される養液で育ちます。栄養素を調節した濃いめの養液によってしっかりと養分を与えることで、端を持ってもまっすぐな状態を保てる、強く太い茎になるのです。

もくめ
もくめ
花の生産というと地植えのイメージがあったので、1株ずつ管理しているというハウスの様子が印象的でした。
スッとまっすぐに伸びたクレマチスの姿は圧巻です!

クレマチスとは?

クレマチスはキンポウゲ科の植物で「つる性植物の女王」とも呼ばれ、国内外でガーデンプランツとして親しまれています。私たちが「花」として鑑賞している部分は、実はがくが発達したもの。本来の花びらは完全に無くなってしまったり、小さくなっていたりします。アジサイやクリスマスローズ、スターチスなど、がくが花びらのようにみえる花は日持ちがいいものが多いですが、池田さん曰くクレマチスも「日持ちが抜群!」なのだとか。


(出典:写真ACより)

クレマチスは、花後にできる実も個性的。この実も鑑賞用として流通するそうですが、アレンジのいいアクセントになりそうですね。

育て上げた株は「財産」

園芸用なら植物の思うがままにフェンスやトレリスに絡ませればよいですが、池田さんのように切り花用の一直線に伸びた茎を作る場合、そうはいきません。一枝一枝観察して脇芽をとり、茎をピンチで誘引して回るという大変手間のかかる作業が必要なのです。

手間がかかるのは日々の作業だけではありません。
池田さんが育成されているのは、もともと園芸用のクレマチス。枝の柔らかさも曲がりやすさも、伸び方も異なる品種の中から切花に向く品種を選び、株づくりをしなければいけないのです。

池田さんが品種選びで重視するのは、「花、茎がピンとすること、枝の伸び方」。有望な品種を選んで扱いやすさを見極めるのにも数年、養液栽培にも耐える大きな株に育て、出荷するまでにはさらに月日がかかります。

「クレマチス農家にとって、株は財産」と、池田さん。SNSで注目を浴びているファーム池田のクレマチスですが、試行錯誤を重ねた先駆者だからこそ手に入れられた大切な財産なのです。

もくめ
もくめ
株が花を収穫することのできる大きさになるまで5年以上かかるとか。
世話をするとつい時間を忘れてしまうという池田さんに、クレマチスへの愛を感じました。

「麻里」運命の出会い

池田さんのクレマチスの中でも特に注目を集めたのが、紫色の壺咲き品種「麻里」。池田さんが知らぬ間に「まり会」ができるほど、全国のまりさんに愛されているそうです。この品種ももとは園芸品種で、花も咲いていない2つの苗を買ってきたところから始まったといいます。

ふいに買ってきた苗がここまでのものになるとは思いもよらなかったそうで、「あのとき何で買ったのかなあ、お導きだったかもしれない。こういう不思議なことってあるよね」と語られていました。クレマチスを長年見守り、楽しみながら栽培を続けられている池田さんへの天からのプレゼントだったのかもしれませんね。

まとめ

「ほんと大変!」といいつつも、あっけらかんとした笑顔で取材に応じてくださった池田さん。じっくりとクレマチスと向き合いながら、パイオニアとして先へ先へと進んでいくのをとても楽しまれているのが伝わってきました。
最近ではガーデニング好きの娘さんと、ご家族ぐるみでクレマチスのお世話に精を出されているそう。池田さんとクレマチスの絆は、一層強くなりそうですね。

もくめ
もくめ
品種の一つ一つにエピソードがあり、クレマチスと共に歩んできた時間を含めて池田さんの財産であるんだなと感じました。
池田さん、貴重なお話をありがとうございました!

 

著:つみき、もくめ