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2021.10.09ブログ

紅葉の不思議ー赤い葉は光合成するの?

日本の紅葉が美しい理由

日本では当たり前のように見られる紅葉ですが、実はこれほど種類が多く、目が覚めるように美しい紅葉は地球規模で考えるととても珍しい物。

その理由としてはまず第一に、日本を含む北アジアでは、 紅葉する落葉広葉樹が欧米に比べて倍ほども多く氷河期を超えて生き残りました。 日本の周りを流れる暖流と適度な雨によって、森が寒さと乾燥から守られていたのです。

前章でも申し上げたとおり、寒さと乾燥は葉を落とす理由になりますが、寒すぎる・乾きすぎる環境では葉が細い針葉樹の方が有利になります。
広葉樹は葉からの蒸発が大きいのに加えて、体の中の水道管が太く、中で凍った水が溶けたときに気泡が生じやすいという弱点があります。気泡によって水の流れが妨げられると、最悪の場合もう水を吸い上げられません。

→過去記事はこちら 松竹梅はなぜめでたいのか?

そのため日本より寒く乾燥していた欧米では、落葉広葉樹が生き残りにくかったのですね。色とりどりの紅葉は立地の良さがもたらしたのでした。

また加えて、色鮮やかな紅葉になるためには

・一気に寒くなる(朝が5℃)
・日光がよく当たる
・空中の湿度が適度にある

といった条件が必要になります。日本はこの条件を満たしやすい気候であるため、世界の中でも稀有な美しい紅葉を楽しめる国なのです。

カラーリーフは光合成をするか

カレックスですが枯れてません


(カレックス コマンスブロンズ)

光合成といえば気になるのが、「カレックス枯れてません」でおなじみのカレックスです。こう見えてもちゃんと生きているカレックス。
いや、もしかしたらこの写真は枯レックスかも。自信が無くなってきました。。。

これ以外にも緑色に見えないおしゃれな葉は「カラーリーフ」と呼ばれて園芸店でよく見かけますね。このような葉は、ちゃんと光合成をしているのでしょうか?

ここで、早稲田大学の園池先生の実験画像を参照させていただきます。植物はカラーリーフとしてよく出回るコリウスです。(*「光合成の森」より)

右の写真は光合成のはたらきを目に見えて分かるようにしたもので、光合成が活発なほど赤く、弱いほど青く、全くない所は黒くなるサーモグラフィーのような写真です。
こちらの写真を見てみると、葉の根元部分と先端部分を比べるとはたらきの差がありますが、紫色の部分と緑色の部分では光合成のはたらきに差がないことが分かります。

つまり紅葉のように緑の色素クロロフィルが壊されて紫色が作られているのではなく、紫色の部分にも同じだけクロロフィルが残っているのではないか、と推測できますね。光合成を担う色素に加えて、+αで色素が作られているというわけです。

同じように考えると、先ほどのカレックスや様々な色を持つヒューケラなども実はちゃんとクロロフィルを持っていて、光合成をしていると思われます。光合成には決まった波長(色)の光を使うので、その光さえクロロフィルに届けば他の色素があっても生活に支障はないのでしょう。

葉っぱの赤ちゃんはなぜ赤い

春先に吹いたばかりの芽が赤くなる植物は多く、「春もみじ」とも呼ばれます。これはこれで瑞々しい美しさがありますよね。やがては青々とした葉に色変わりし、夏を迎えます。
植物によってその効果はまちまちのようですが、植物によってはアントシアニンによって紫外線を吸収し、まだ未発達の新芽を守るためにこのように赤くなっているようです。

落葉しない多肉植物や多年草なども寒さに当たると赤く紅葉することがありますが、これも紫外線から身を守るためなのかもしれません。

おまけ:茎付きさくらんぼの不思議

人間は「茎」を好む?

秋に入ると、のいばらの実やビバーナム、サンキライなどの実物も季節感が出て素敵ですよね。12月には千両や万年青の実も出回ります。ここで一つ、「実」について調べて面白かったことをご紹介しましょう。

さくらんぼを思い浮かべてください。何か上の方に共通点がありませんか?絵文字にすると 🍒 …茎がついていますね。実はこれ、自然の状態からすると不思議なことなのです。

果実の本来の役割は、鳥やけものに食べてもらってその中の種を運んでもらうこと。食べてもらいやすくするためにわざわざ実をおいしそうに染めたり、甘くしたりします。
同じように食べてもらいやすさを追求するなら、固い茎から切り離して、柔らかい果実だけを食べさせる方がいいはずです。

ところがさくらんぼは、上の写真のように茎のついた状態で収穫されます。これは育種の過程でなぜか食べられない茎がある方が好まれ、残されてきたため。
茎から勝手に落ちない分きちんと収穫ができるから残したとも考えられますが、農家さんでなくても茎がついているほうがなんとなくおいしそうで好印象に見えませんか?

逆にビバーナム、千両などは本来の役割に沿って簡単にポロポロとれるものが多いですが、私たちは「食べない実」として認識していますよね。人間の感覚は不思議なものです。

あとがき

(緑からレモン色、オレンジ、燃えるような赤色まで一つの樹で美しいグラデーションを作るナンキンハゼは、私が大好きな樹です。クロロフィルが分解されてからアントシアニンが作られるまでのタイムラグのおかげで、このようなグラデーションになるのかも。)

紅葉と黄葉のしくみ、日本で美しい紅葉がみられる奇跡。奥が深い色づく葉っぱの世界、お楽しみいただけましたでしょうか。きっとこの記事をお読みになったあなたなら、「綺麗だな」と見とれる以上の深い楽しみ方、新しい発見ができるでしょう。話のタネにももってこいです。

記事を書いていたら紅葉狩りがしたくなってきました。気軽に遠出できるようになる日が待ち遠しいですね。

営業企画部

参考文献

日本植物生理学会,「みんなのひろば」,最終閲覧日2021/10/8, https://jspp.org/hiroba/index.html
秋と春の落葉の違い  https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2184
赤い葉の葉緑素 
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2422
黄葉と紅葉について  https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1107
さくらんぼの離層 
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=848&key=&target=

園池公毅,光合成の森,光合成実験室,  http://www.photosynthesis.jp/photoex3.html

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