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2021.10.09ブログ

紅葉の不思議ー赤い葉は光合成するの?

 

*お知らせ*
筆者ワクチン接種のため、10月第3週のブログはお休みです。(翌週火曜日10月19日のYoutube更新はあります。こちらもお楽しみに)

のばらの実や紅葉したドウダンツツジなど、実物枝物が美しい季節になりましたね。

ところでドウダンツツジは周年出回る枝物ですけれど、紅葉するのは涼しい季節だけ。紅葉は冬の準備といわれますが、そもそも何のために赤くなったり黄色くなったりするのでしょう。
また鉢物で「カラーリーフ」と呼ばれる赤や黄色の葉を持つ草花は、緑でなくてもちゃんと光合成をしているのでしょうか?

今回は知れば知るほど面白い、 紅葉の不思議 について深堀りします。読後は紅葉狩りをより深く楽しめることうけあいですよ。

今回のもくじ
1 なぜ秋に紅葉するのか
 — 何のために葉落として何のために染まるのか
 — 実は“色づいて”いないのはどっち?
 — 日本の紅葉が美しい理由
2 カラーリーフは光合成するか
 — カレックスですが枯れてません
 — 葉っぱの赤ちゃんはなぜ赤い
3 おまけ:茎付きさくらんぼの不思議 
 — 人間は「茎」を好む?
4 あとがき
 
キーワード:活性酸素、アントシアニン、品種改良

(この記事のまとめ動画→近日公開!)

なぜ秋に紅葉するのか

何のために葉落として何のために染まるのか

まず、なぜ植物は寒くなると葉を落としたり紅葉したりするのか。これには光合成と空気の乾燥が強く関わっています。

理由1:光合成の効率が悪くなったため

まずは光合成の点からお話ししましょう。
「日辺りはいいけど水や温度が足りない」…これが植物にとってよろしくない環境であることは感覚的にお分かりいただけるかと思います。

なぜ温度が必要なのかというと、光合成は酵素の働きを利用するため。寒くなると酵素の働きが鈍くなり、たくさん光を受け取ってもそのあとの処理が追いつかなくなってしまいます。
すると行き場を失ったエネルギーが毒(活性酸素)を生み、周りの細胞を傷つけてしまうのです。(これをクロロフィルの光毒性といいます。)
光合成はあらゆる生き物にとって欠かせない仕組みですが、諸刃の剣なんですね。

細胞が傷つくと光合成の効率がさらに悪くなり、 葉っぱをつけておくエネルギーと葉っぱで生み出せるエネルギーのつり合いがとれなくなる 。そうなると、植物は葉の中の養分や使える物質を回収して葉を落とします。
このときさらなる細胞のダメージを防ぐためにクロロフィルを分解するので、葉っぱの緑色が失われるのです。

(ヒペリカムも葉が紅葉します。)

では、なぜ赤くなるのか?
その理由についてはまだ分からないことも多いですが、この赤色は 「アントシアニン」 という色素の色。紫外線や青色の光を吸収して葉を守るために作られる、などといわれています。
有害になってしまったクロロフィルを分解しつつこのアントシアニンを作るので、葉が緑色から赤色へと変化するように見えるのです。

なお、葉っぱが枯れても枝につけたままにしている木もしばしば見受けられますが、これは 枯凋性 と呼ばる性質です。葉をつけておくことでその根元にある新たな芽を保護したり、動物に食べられにくくしているのだとか。

 +Step Up  光合成の2つの回路
①光化学系 … クロロフィル(緑色の色素)が光を受け取り、水素から電子を取り出す  → 光と水が必要 
②カルビン・ベンソン回路 … 酵素の働きで炭素を固定する(でんぷんにする)→ 水と二酸化炭素と適切な温度が必要

光が強くて寒い⇒②が鈍り、①が過剰になる⇒活性酸素が出る

理由2:乾燥をふせぐため

また、冬になると葉を落とす理由のもう一つが 空気の乾燥 です。葉が大きい落葉広葉樹はたくさんの光を受け取れますが、その分たくさんの水分を失います。

このために葉を落として水分の消費をふせぎ、休眠して春を待つのです。

“色づいて”いないのはどっち?

日本で「こうよう」と言えば、モミジのように葉が赤くなる「紅葉」とイチョウのように葉が黄色くなる「黄葉」とがあります。
人間からするとどちらを見ても「葉が染まってきれいだなあ」という感じなのですが、この二つは実は異なる仕組みで色が変化しているのです。

「紅葉」は先ほど申し上げたように、葉の中のクロロフィルが無くなると同時に アントシアニンが作られることで赤くなります。 アントシアニンという赤い絵の具で文字通り葉が染まっているわけです。

一方、「黄葉」では基本的に新しい色素は作られません。クロロフィルが分解されて緑色が無くなると、元々ベースにあった黄色の色素が目立つようになります。
私たちは見慣れた緑色が鮮やかな黄色になると「黄色に色づいたなあ」と思いますが、細かく見ると 「色がついた」というより「色を失った」ことで起こる現象なのですね。 

なお、こうして黄色になったイチョウの葉は、ほとんど一斉に木から落ちてしまいます。
この理由についてははっきりとしていません。新しく色素を作る手間がないから葉っぱ同士のタイムラグが少ないのかしら。皆さんはどう考察しますか?

また秋以外でも弱った葉っぱは黄色くなってから枯れますが、同じ戦略でクロロフィルを分解することでそれ以上のダメージを防ぎ、使えるものは回収しているのではないでしょうか。
一方的にやられているように見えて、実は強かに次の準備をしているのかもしれません。

(次:日本の紅葉が美しい理由>>)

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