新着情報
展示
2021.06.19展示
【6月のゆりの展示会】百の集合、多彩な百合の花
今年も各市場で開催された、中村農園さんの 「6月のゆりの展示会」 。名港フラワーブリッジでも100種を超える品種のユリが並ぶ圧巻の展示となりました。
後日展示の模様をYouTubeに投稿しますので、開催中来られなかった方もぜひご覧ください。
一つの品種名でありながらユリの代名詞となっている“カサブランカ”のように、ユリといえば白色で花びらが豪華に反り返る大輪のものが一般的。
私自身もこの世界に飛び込むまではユリ=“カサブランカ”でしたが、もちろん展示中の100種すべてがこのようなユリというわけではなく、多種多様な姿の花が流通しているのですね。
今回のもくじ
1 OT、LA、OH…それぞれどんなユリ?
— ユリを表す「OALT」
— いいとこどりの新系統たち
2 八重のユリ
— ユリの「花びら」は何枚か
3 日本と西洋のユリ
— なぜ百合か
— ユリの立ち位置
4 まとめ
OT、LA、OH…それぞれどんなユリ?
ユリを表す「OALT」
ユリを見ているとよく出くわすのが、「OT」「OH」「LA」「LO」といった記号。
それぞれ別の系統の略称ですが、O・A・L・Tの四つの系統の組み合わせ(Hはハイブリッド=交配種の意)なので、この4つだけ覚えてしまえば「OTってどんなユリだっけ?」などと思い出しやすいです。
O…オリエンタル系
(左:ヤマユリ、右:カノコユリ)
「O」は「Oriental=オリエンタル」系のユリのこと。ヤマユリ、ササユリ、カノコユリなど日本の本州に自生する種をルーツにもつ系統です。
原種を持ち帰って品種改良が盛んに行われたヨーロッパから見て東方(オリエント)、といったところでしょうか。カールのかかった花がうつむきがちに咲いて、長いしべを伸ばす咲き姿が優雅ですね。
オリエンタル系の原種であるヤマユリとカノコユリをかけあわせたのが 「オリエンタル・ハイブリッド(OH)」 という系統で、その後オランダで上向き咲きのOH系統の育種が進みました。
先ほどの“カサブランカ”もこの系統の品種の一つです。
(展示より オリエンタル系“スカイマスター”)
大輪で華やかな花形、強い芳香はまさにユリの女王。八重咲きの品種は特に絢爛豪華な印象です。女王様なだけあって栽培と輸送が難しく、他の系統のユリよりも高価になります。
「じょおうのO」と覚えると都合がいいでしょう。
(品種改良は近縁種同士でないと難しいため、アジアのユリが交配親として使われた。八重咲き、無花粉も。)
A…アジアンティック系
(左:スカシユリ、右:オニユリ)
「A」は「Asiantic=アジアンティック」系のユリのこと。
中部以北の海浜地帯に分布するスカシユリ、日本のほか中国やグアムといった東アジアに自生するオニユリといった先祖のカラーバリエーションを引き継いで、黄やオレンジといったオリエンタル系には無い情熱的な色合いが豊富です。「あたたかいのA」ですね。
アジアンティック系の交配種は長さが短く小柄で、一本に多くの蕾をつけます。オリエンタル系のような香りはありませんが、花形が固く丈夫で安価です。ホームユースには嬉しいサイズ感かもしれません。
(展示より アジアティック系 左:“ニョイズ” 右:“イーグルアイ”)
L…ロンギフローラム系
(展示より 鉄砲ユリ 左:“ショーアップ” 右:“カルビーノ”)
「L」は「Longiflorum=ロンギフローラム」系のユリです。
「ロンギフローラム」は鉄砲ユリの学名Lilium longiflorum Thunb.から来たもので、「longiflorum」はラテン語で「長い花」という意味。「長い(Long)のL」と覚えておけば十分でしょう。
特徴的な白いトランペット状の花は日本、特に琉球諸島が原産の鉄砲ユリや、民家の庭にも生えてくるタカサゴユリがルーツです。
他のユリと比べても長い花筒は、ポリネーター(花粉の媒介者)であるスズメガを花の奥にある蜜のありかに誘い込み、虫の体に花粉をくっつけるためのもの。
鉄砲ユリと台湾タカサゴユリの交配で LH(ロンギフローラム・ハイブリッド)系 が作られたほか、先ほどのアジアティック系との交配で LAハイブリッド という新たな系統が生まれています。
T…トランペット系
この投稿をInstagramで見る
「T」は「Trumpet=トランペット」系のユリのこと。中国のリーガルリリーなどがルーツです。そのまま、「トランペットのT」ですね。
リーガルリリーは日本の鉄砲ユリに似てトランペット型の長い花筒をもちますが、筒の内側奥は黄色、外側は赤紫色を帯びてより可愛らしい印象です。
トランペット咲きのユリは背が高く色調豊かで、オリエンタル系との交配で OT(オリエンタル・トランペット)系 という新たな系統が作られています。
はしやすめ:ゆりはなぜ「百合」と書く?
「百合」という漢字は「百」個が「合」わさっている、という意味。
ユリの球根であるユリ根の鱗片の数が100に及ぶほど多く、それらが集まっていることが由来です。
1 2