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産地訪問
2020.11.07産地訪問
【産地訪問】フラワーファーム沓掛さん:時代に土地に適応する
10月末、過去記事でダリアを取り上げさせていただきました、(過去記事はこちら)
長野県青木村、フラワーファーム沓掛さんをお尋ねしました!
朝9時、標高が高いだけあって涼しい作業場にてまずはご挨拶を。
セリ場でお見かけしたマイクロポンポンダリアとも再会できました。
少し変わった品目を栽培されているだけあって植物についてお詳しい沓掛さん。
まるで教授のお話を聞いているかのようです。
「イングリッシュローズとオールドローズと、モダンローズの違いは?原種はどこに?」
と聞かれて内心どぎまぎする私。
バラは一番好きな花なのでなんとか答えられました、よかった…!
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この答えについて詳しくはまた別の記事にしますが、
多くのバラの原種、ルーツがあるのは中国雲南省や小アジアのお山、ヨーロッパ。
いずれも日本ほど夏が暑く、高温多湿になるような場所ではありません。
特に中世以降ヨーロッパを中心に育種が進められたのが「ハイブリッドティー」と言われる系統のもので、
切花用のバラはほとんどこれ。モダンローズとも呼ばれます。
バラの本来の生態からすると、日本は安心快適な土地とはいえないのですね。
ガーデンローズの栽培が手間がかかり難しいといわれる所以の一つでもあります。
このために蒸し暑い日本では季節に合わせて涼しいところに産地が移ったり、
夏場には夜冷が必要になったりするのです。
温室での管理のおかげで国産でも周年手に入るお花ではありますが、
そのためには多くの工夫と手間がかけられているのです。生産者さんに頭が下がりますね。
同様にダリアについても、日本と生まれ故郷では環境が異なる場合があると教わりました。
日本で主に栽培されているダリアの種はメキシコの大西洋側、標高の高い場所が原産地です。
この仲間のダリアは茎の中が中空になっており、長雨になったりするとここに水が溜まって腐ってしまいます。
ダリアは茎を芽の上で切ることで枝数を増やしていくそうで、剪定の時期が長雨と被ったり、
かつ露地栽培だったりすると大変なことに。。
バラやダリアはブライダルなどの大きなアレンジの主役を張れる華やかな花ですが、
今年は新型コロナウィルスの影響でそうした需要は大きく減ってしまいました。
加えて今年は長雨にあたったこともあり、ダリアにとってはなかなか厳しい年になったようです。
(フラワーファーム沓掛さんの圃場は標高1000mを超える高地。日本の中ではダリアに適した土地なのかも)
一方、沓掛さんが手掛けておられるサブ役の葉っぱやミシマサイコなどの草花たちの需要は
「花が売れないご時世って本当か?」と思うほどに伸びたそう。
引率して頂いた切花営業さんの
「今まで光だった部分が陰になって、その陰にあったものに今光が当たっているのかもしれませんね」
という言葉が印象的でした。
原産地が日本に近い気候の花や種類を選んだり、現地の気候とのギャップを埋める栽培の工夫をしたりと
何を・どう育てるか、今一度見直すべき時なのかもしれません。
圃場見学
圃場はお山のさらに上!
車を降りるとさすがの寒さです。
ハウスには背丈ほどあるダリアの株たちがずらり。
一部のハウスには害虫を避けるためのライトが取り付けられていました。
このライトで害虫が苦手な波長の光を当てるのです。
茎を見るとなるほど空洞になっています。太めの筒ですし、雨が降ったら貯まりそう。
ダリアの成長点培養、またその際に起こる突然変異を利用した品種改良について、
ダリアがもつ遺伝子について…などマニアックな話題が次々と飛び出します。
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「一本の大黒柱ではなく、沢山の爪楊枝で支えている」との言葉どおり、
圃場を歩いていると何種類もの草花や木が目に入ります。
可憐なシュウメイギク、辺りにはシカの糞がコロコロ。
困ったことに植物で遊んだり食べたりしてしまうそうで、自然とも闘いがありますね。
クエルカスが美しく紅葉を始めていました。
輸入のものでは普段数本の束、ほぼドライの状態で届く枝の生きた全体像が見られて感動する企画部。
こちらの繊細な草花は シキンカラマツ。先日のブログでも登場したキンポウゲ科で、
山地の林内に生える山野草です。
ご案内いただく道すがら、
「これはキョウチクトウ科だから、切って出てきた汁には気をつけて」
「これも同じ科だから水が下がらない」
と分類をもとにして解説してくださいました。
○○科、〇〇属、と同じグループに属しているものは遺伝子が近いため、
似た性質を持っていたり、好む土や気候が同じことが多いです。
もっと具体的に考えてみましょう。こちらは最近発売になったピクミン3デラックスのPVです。
この星、実は現代の地球とよく似た植生を持っていて、こちらの動画でもまず目に飛び込んでくるのは
斑入りのお洒落なインパチェンスです。明らかに園芸種が野生化していますね。
他にもサトイモ科っぽいつる性の植物だったり、物語が進んでいくとチューリップやオランダイチゴ、
トキワシノブやシダの仲間、ナンテンとエリアごとに見覚えのある植物が生えています。
(圃場のナンテン)
これだけでも何となくそれぞれの土地の雰囲気は分かりますが、
「ここなら同じサトイモ科のポトスは栽培できそう」
「この科が育つ環境なら地球の日本に近いから、これもいけそう」
など考えることができますね。
見知らぬ星に不時着したとしても、分類を知っている植物があれば栽培の幅が広がるというわけです。
(バラ科のキイチゴ)
また「姫リョウブ」はリョウブの仲間かな?と思いきや全く別の仲間だったりと
通称で呼ばれている名前は意外とあてにならないので、
品目選びや栽培の際はきちんと植物の分類や原産地を知っていると便利なのかも?
と思いつつお聞きしていました。
( 遺伝子分析の技術がまだない時代には姿形により仲間わけや命名がされていたため。
人為的・主観的な分類⇒科学的・再現性のある分類へと、より実用的になりました。 )
思わず「かわいい~!」と声が出てしまうロンギフォリア。
ピクミン3の星にも見られるオオイヌノフグリと同じオオバコ科、ベロニカ属です。
そしてご覧ください、この一面のダスティミラー!
ここまできちんと木になって、長さのあるものは珍しいそう。
こちらはなんと沓掛さんがご自分で植え付けられたヤドリギ。
木のはるか上についているのを遠目に見た経験しかなかったので、ありがたく近くで見て触らせて頂きました。
沓掛さんはかつて市場でお仕事をされていた時には草花担当、
バイクで植物を求めて林道を走り、道端にも色々な草花が生えていることに気が付いたそうです。
「とことん好きにならないとだめ。虎穴にいらずんば虎児を得ず、蛇の道は蛇」
好きなもののことならどこまでも調べたいですし、調べて新しい知識を得るとより好きになれるもの。
お花をもっと好きになって頂けるような興味深い情報を集めて発信していきますので、
これからもどうぞお楽しみに。頼りがいのある蛇になりたいです。
フラワーファーム沓掛さん、ありがとうございました!
営業企画部