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花の研究室
2020.10.12花の研究室
市場の必要性を分かりやすく解説【卸売市場#とは】
新型コロナウィルスの流行を受けて、市場に出せなくなったお花や食べ物の産直の通販が春から多く見受けられましたね。
これら市場を通さない流通の仕方は「市場外流通」といい、産地からご家庭に届くまでに諸々の手数料がかからないので
市場を通して買うよりお安く買える場合が多いです。
(生産地→市場→(仲卸)→小売店→消費者 と市場を通した流通は市場内流通)
今はしようと思えばネットで全国各地の産地さんと繋がり、直接注文ができることもあり
「産直・市場外の方が安くていいんじゃない?」「原価に上乗せされた値段で買わなくてもよくない?」
と思われる方もあるかもしれません。
経済的で産地さんの顔が見える安心感も確かにありますし、せっかく作ってくださった大切な品物を
この非常時でも販売していただけるのは喜ばしいことなのですが
実は市場内流通には市場内流通の大切な役割があるのです。
ということで、改めて私たち卸売市場の役割、必要性を主張させて頂きたいと思います。
今回ご紹介するのは3つ!
①取引総数最小化の原理
②不確実性プールの原則
③価値・価格・相場の形成
なんだか漢字ばかりですが、なるだけやわらかくしてお伝えしますので、気軽な気持ちでお読みくださいね!
①取引総数最小化の原理
生産者と消費者の間に流通業が介入することで、全体の取引総数が減少するという考え方です。
もし卸売市場が存在せず、すべての産地さんと小売店さん(または消費者さん)が直接取引をする場合、
こんな感じになります。
産地さん視点だと小売店さんそれぞれと計7回のやり取りをする必要があります。
もちろん配送コストも同じだけかかってきますし、たくさんトラックが走ることになりそうですね。
ここで卸売市場が間に入るとこのようになります。
産地さんから一度荷物を集約・市場が振り分けて配送するので、産地さんは市場に荷物を送るだけで済みます。
また小売店さんも市場とやり取りをすることで、
「バラはあの産地にメールして、ユーカリはこの産地に電話して…」と個別にやり取りすることなく、
「あそこのバラとここのユーカリをお願いします!」とさまざまな産地の荷物を一度に注文することができます。
配送する車も少なく済むので環境にも優しいですね。
ということで、卸売市場が産地と小売店(消費者)の間に入ることで様々な手間・コスト・負荷を全体として省くことができるのです。
②不確実性プールの原則
「各小売店がそれぞれ在庫を持つよりも在庫を卸売業者に集中させた方が、より少ない在庫量で需要の変動に対応できるということを説明する理論」です。
「?」という感じなので、300個ほどのハロウィンかぼちゃの需要が見込めるリス村を例にして考えてみましょう。
リス村のコン花店さん、キリン花店さん、パオ花店さんはハロウィンに向けてかぼちゃの仕入れをしようとしています。
品ぞろえはあるほど目を引きますよね。他店にも負けたくありませんし、売れ行きが良すぎてすぐにお店がスカスカになってしまっても困ります。
一方ライオン農園さんはかぼちゃの生産者さん。(同じ枠に囲いましたが、リス村とは別の村にいます)
かぼちゃが生産できる時期・保管できる時期は限られますから、沢山採れる時に大きなロット・少ない回数で出荷したいです。
卸売市場がない場合、仕入れの様子はこんな感じになります。
*個数と品物はとりあえずの例です
ライオン農園さんは200個の商品を別々に3回出荷します。
花店さんたちは多くの在庫を持って万全の態勢でハロウィンを迎えますが、
実際のリス村の需要は 村の花店が抱えている在庫の合計よりも少ないため、多くの売れ残りが発生します。
パオ花店さんなんかは食べて在庫消化できそうですが、人間界ではそうもいきません。
ここでシカ卸売市場さんの登場です。
卸売市場は花店さんの代わりに沢山の商品を入荷・保有し、ライオン農園さんに代わって花店さんに振り分けます。
ライオン農園さんは1回の出荷・大きなロットの配送で済みますね。
卸売市場が産地さんと花店さんの間に入り、小売店が持つには多すぎる在庫を代わりにもっておくことで
花店さんたちは余分な在庫を抱えることなく、最低これだけはもっておきたいなというだけの在庫で済みます。
この場合、実際のリス村の需要と花店さんたちが抱える在庫量が近づくので、村全体のかぼちゃロスは少なくなります。
③価値、価格、相場の形成
最後に大切な役割が、「値段をつけること」です。
まずこちらをご覧ください。この石たちはいくらだと思いますか?
上2つは宝石の原石、左下はそれを細かく加工したルースと呼ばれるものです。
右下は石ころ…に見えますが、ラバストーンといわれるパワーストーンです。
これらのサイズは大きいのでしょうか、小さいのでしょうか?綺麗なのか、B品なのか?
これらの「相場」って、どんなものなのでしょう?
値段をつけるならいくらが適正なのでしょう?
私たちがフリーマーケットで商品の値段をつける時も「ふつう買ったらこのくらいだから、まあこんなものかな」と
出回っている相場の値段を基準にして考えますよね。
もし相場がなければ極端な話、とても良い品物なのに二束三文でしか買ってもらえなかったり
B品にも関わらず法外なお金を払ったりということになりかねません。
そして値段をつけたり、相場を把握するにはあらゆる品物を見比べたり、情報を集めたりしなければなりません。
十分な経験と感覚が必要な部分でもありますね。
その役割を担っているのが多くの商品と多くの情報が集まる、卸売市場なのです。
まとめ
①取引総数最小化の原理
②不確実性プールの原則
③価値・価格・相場の形成
市場の必要性、なんとなくお分かりいただけましたでしょうか。
実際の流通はもっと複雑なので①②は必ずしもこの通りとはいきませんが、
③の価格形成については販売経験、かつ卸売市場の「競り人資格」がある競り人しかできないことです。
(先日デビューしたばかりの競り人さんの動画はこちら)
とはいえ、IT技術は急速に発展していますし、市場外流通や産地直送が増えていくのは間違いないかと思います。
農家さんにおいては花づくりのこだわりや個性のPR、
お花屋さんにおいては「そのお花をなぜ仕入れたのか」「どんなこだわりをもってお店作りをしていくのか」
といったお店ならではの情報発信、
いずれにしても消費者目線で「ここのお花がほしい!」と思われるブランディングと発信ができるとよさそうですね。
そしてもちろん、私たち卸売市場も、農家さん・小売店さん・一般消費者さんに
「ここの市場はいいな、利用したいな」と感じていただけるような情報収集・発信をしなければなりません。
その手段のひとつが今年再び走り出したこのブログです。
楽しく・新しく・分かりやすい情報発信を心がけて参りますので、今後ともどうぞお付き合いくださいませ。
営業企画部