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2021/01/30
花は音を聞き、聞こえない声で話す

 

1月31日は愛妻の日!ということで、展示ルームには沢山のチューリップが咲きこぼれています。

 

 

 

 

こんなに見事に咲いていると、思わず「みんな可愛いね~!」と声をかけたくなるものです。

育てている花に「元気?」「咲いたね~」と話しかける人も少なくないのでは。

 

動物のような耳を持たない花ですが、私たちの声は届いているのでしょうか?

 

 

 

花には「耳」がある?

 

 

ここで一つ、興味深い研究をご紹介しましょう。

 

 

 

マツヨイグサは蜂の羽音を「聞く」

 

 

2019年、テルアビブ大学の研究ではマツヨイグサの花が音を感知して蜜を甘くすることが示唆されています。

 

 

(マツヨイグサ)

 

 

 

研究チームは、

①音を集めやすいお椀の形をした花をもつマツヨイグサは、空中の音に反応して振動する

②ミツバチの羽音を聞いたマツヨイグサは蜜の糖度を上げる

と予測。

 

花を防音のガラス瓶の中に入れ、

無音、録音したミツバチの羽音、コンピューターで作った低周波の音、中周波の音、高周波の音

の5種類の音を聞かせました。

 

 

 

 

ハチがホバリングする時の状況に似せるため、スピーカーを花の10 cm上の位置にセッティング、

かつ10秒ごとに聞かせる花を変えるというこだわりようです。

 

花は微細な動きを感知できるレーザー振動計の下に置かれ、

聞かせた音と共鳴しているか?を調べられます。

また処理後3分後に、花の蜜の糖度を測定しました。

 

 

 

 

実験の結果、ハチの羽音と花の周波数が一致。

蜂の羽音を花がキャッチして共振していることが確認されました。

 

また、ハチの羽音を聞かせた花では、蜜の糖度が大幅に上昇。

 

・ハチの羽音と似た低周波の音を聞かせても糖度が上がり、両者の効果に差はなかったこと

・無音、中・高周波の音では糖度に変化はみられず、効果に差もなかったこと

・ガラスを被せた花に羽音を聞かせても変化がなかったこと

 

から

マツヨイグサの花が純粋に周波数に反応した、

つまり特定の音を「聴いて」蜜を甘くしたことがわかります。

 

 

なお面白いことに、花びらの一部を取り除いてしまった花は音と共鳴せず、糖度は上がりませんでした。

「花がお椀型の形をしている」ということがポイントなのですね。

 

 

    

(音を集めやすい形??)

 

マツヨイグサにとって、ハチは花粉を花から花へ運んでくれる送粉者。

たくさんの蜜でおもてなしをすれば、それだけたくさん受粉をしてもらうことができます。

 

しかし、魅力的な蜜を作るには多くのコストがかかり、アリなど関係ない動物に盗まれる可能性も。

蜜を作るタイミングが重要なのですね。

今回の実験で観察されたように、ハチの羽音がする時に蜜を甘くするのは理に適っているといえます。

 

 

研究者は花の形と音に注目し、「植物音響学」として研究を続けているようです。

 

「花の形はこの『聞く』能力のために選ばれたのかもしれないし、

送粉者は植物が聞こえる音を出せるように進化するのかもしれない」

 

とまで述べているんですよ。

 

音は生き物にとって、とても重要な情報源。

花が音を感じ取り、利用していても不思議ではないのです。

 

 

 

 

植物のコミュニケーション

 

植物と昆虫の「会話」

 

2013年、ブリストル大学の研究チームは

新たな「花から蜂への情報伝達方法」を発見したと発表しています。

 

その方法とは、花に止まった蜂が花の電気状態を感知し、情報を引き出すというもの。

 

 

花と蜂と、電気に何の関係が…?

ということでもう少しだけ、かみ砕いてご説明しますね。

 

 

花びらと花粉は弱いマイナスの電荷、空中を飛ぶものは空気との摩擦で強いプラスの電荷

を帯びることがいくつもの研究から知られています。つまりは静電気ですね。

 

マイナスの電荷をもつものとプラスの電荷をもつものが触れると、

プラスの電荷をもつ方に電子が移動します。冬にパチッ!となるのはこの現象です。

 

 

実験ではペチュニアの茎に電極を接続し、

ハチが舞い降りると花の電荷が数分間変化することが発見されました。

マイナスの電荷をもつ花から、プラスの電荷をもつ蜂へと電子が移動したのですね。

 

後から訪れる蜂は、この花の電荷の変化を感知して

「この花にはもう他の蜂が来ている」

というメッセージを受け取っているのかもしれない、ということです。

 

花がこのために静電気を調節しているのか?までは明らかになっていませんが、

花と虫のコミュニケーションの方法の一つとして考えられています。

 

 

 

花は顔を赤らめる

 

もっと分かりやすい虫へのメッセージは、花色の変化です。

以前ご紹介したランタナ(過去記事:『ランタナはなぜ色が変わるの?』)もそうですが、多くの花が受粉した後に花びらの色を変えます。

 

送粉者に「もう受粉しているから蜜はないよ」というメッセージを送っているのですね。

ほとんどの蜂は赤い色を認識しないので、花の色を赤らめることは理にかなっているといえます。

 

 

他にも、

 

・植物が虫に食べられたとき、化学物質を出してその虫の天敵を呼ぶ

・その化学物質を感知した他の植物が対策を始める

・植物同士で栄養のやり取りをする

 

など、

植物と昆虫、または植物同士のコミュニケーションがあるということは

多くの科学者によって明らかにされています。

 

 

少なくとも声は届いているかも

 

花は私たちの思っている以上に音を聞き・言葉を話し、

虫や仲間同士で情報を交換しているのですね。

 

もしかすると、ご紹介したマツヨイグサと同じように

花はハチやチョウの羽音や、私たちの声までも聞いているのかもしれません。

 

 

言葉の意味が伝わっているのかはわかりませんが、

「可愛い!」と感嘆する声の周波数と共鳴しているのかも…

なんて妄想すると、もっと花に声をかけてあげたくなりませんか?

 

 

 

 

営業企画部

 

 

参考文献

 

bioRxiv  https://www.biorxiv.org/content/10.1101/507319v1

“Flowers respond to pollinator sound within minutes by increasing nectar sugar concentration”

doi: https://doi.org/10.1101/507319

 

『考える花 進化・園芸・生殖戦略』著:スティーブン・バックマン

 

“The role of electrostatics in pollination” March 2000Plant Systematics and Evolution 222(1):133-142

DOI: 10.1007/BF00984099

 

 

 

 

 

 

 

 

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